4400人が本棚に入れています
本棚に追加
ゆき乃と豊川は人混みをかき分け、社務所にたどり着いた。
「ゆき乃さん!先生!」
巫女姿の美津が二人を迎える。
「美津さん、こんにちは!あの…藤原さんから連絡が来て…」
ゆき乃がそこまで言うと、美津は「こちらへ」と二人を案内した。
ガラ…
「え…」
引き戸を開けた部屋には、事務机が数台並べられ、その机の上に光流があぐらをかいて座っている。
「藤原くん。頭、可愛いですね」
神主の狩衣姿に前髪をちょこんと束ねた光流を見て、豊川が言った。
「突っ込むとこソコじゃないでしょ、センセ…」
パン!
光流は自分の膝を叩いた。
「藤原さん、これは一体…」
「伊藤安次郎さんのご子孫が『浅草神社に御礼をしろ』と何度も夢枕で言われたらしくてさ」
「御礼がこの机なんですか?」
ゆき乃は部屋中の机を眺めた。
「そのご子孫が学習デスクとか事務用品で有名なイトーキの会長だったんだよ」
「え…」
♪イトーキ学習デスク
ゆき乃の頭の中でCMの曲が流れた。
最初のコメントを投稿しよう!