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「とゆーワケでぇ、一人一台持って帰って?」
「む、無理ですよ!」
ゆき乃はねずみ色に光るどっしりとした事務机をマジマジと見つめた。
「僕はありがたく頂戴致します」
豊川は光流にお辞儀をする。
「えぇ!先生…どうやって持って帰るんですか?」
ゆき乃が驚いて豊川を見たその時、浅草神社職員が部屋を覗いた。
「権禰宜、そろそろお時間です。お願いします」
それだけ告げると頭を下げ、忙しそうに立ち去って行く。
「じゃ、行くかっ」
光流は机から飛び降りた。
「ちょっと、光流さん!髪、どうするんですか?それじゃあ、あまりにも…」
美津はパイナップルのように結わいた光流の前髪を見る。
「いいッスよ、これで。…あまりにも何ですか?」
「…阿呆(アホウ)です」
「はいはい。アホウの儀式、始めまーす」
光流はそのまま烏帽子を被った。
ピチョン…
緑色の水かきが下水を掻き分ける。
ピチョン…
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