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「ぎー…?」
光流は恐る恐る、石像に呼びかけた。
「……」
やはり反応は無い。
「藤原さん…」
ゆき乃はいたたまれなくなり、光流の名を呼んだ。
「待ってろって言ったのに…」
光流の石像を見つめる瞳が潤み始める。
さっき現れたぎーは幻だったのかも知れないと光流は思い始めた。
もしかすると、ぎーの残留思念が形となって現れたのかもしれなかった。
もしくは、光流自身の願望が幻のぎーを作り出したのかも知れない。
「こんなとこに一人でいたら寂しいだろう?」
光流はぎーの石像を撫でた。
ペト…
「大丈夫。街あるきの観光客とか来て、結構、賑やかなんだぞ」
光流とゆき乃の背後から、ぎーが現れた。
枯れ木のようなすーのミイラを抱いている。
「お前!」
「ぎーちゃん!良かったぁ」
光流もゆき乃も安堵の息をついた。
「あ、ヒカル泣いてる」
クスクスと、ぎーは笑った。
「ど、どこにいたんだよ!」
光流は口を尖らせる。
「喜八のおやっさんの墓の前で昼飯食ってた。ケケケ」
「…たく。…また来るから、俺ら行くぞ」
「おう!またな。ヒカル、狐」
ぎーは小さく手を振る。
光流とゆき乃はぎーに背を向け、曹源寺の石門を出ようとした。
「あ!」
ぎーの声に光流とゆき乃は振り返る。
「キュウリありがとな!…あと、浅草神社の北東に嫌な気の塊がある。気をつけろよ」
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