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「お前さぁ、スカイツリーの近くに住むってどんな感じなのぉ?」
光流はヘラヘラと笑いながら、ゆき乃にもたれかかった。
「ちょっと、藤原さん。そんなに酔ってるのに、家まで送ってくれなくていいですよぉ」
ゆき乃は両手で光流を押し返す。
二人は言問橋を墨田区に向かって歩いていた。
豊川の屋敷で昼膳ばかりか、結局、夕膳までご馳走になったのだ。
時間は既に夜の九時を回っていた。
「おい、聞きたかったんだけどよ、先生と何かあったろ?」
「それ、質問じゃなくて断定じゃないですか。何も無いです!」
ゆき乃は絡む光流の対処に困った。
「…藤原さん、ここで大丈夫です。ありがとうございました。さようなら」
三囲神社のある見番通りの角で、ゆき乃は頭を下げた。
「はん。じゃーな」
光流は、あっさりと帰っていく。
「はぁー」
ゆき乃は光流の後ろ姿を見て、ため息をついた。
「ただいまー。お父さん、着替えてきちゃうねー!」
「おう、おかえり」
自宅に着くと父、雪雄に声を掛け、ゆき乃はすぐに二階の自室へ向かった。
ガチャ。
「…え?」
ドアを開けると見慣れた自分の部屋のカーペットに誰かが座っていた。
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