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電話口の光流の声は慌てていた。
「ど、どうしたんですか? 落ち着いて…」
「これが落ち着いていられるかっつんだよ!」
(うっ…耳いたっ)
ピ…
怒鳴るような声に、ゆき乃は受話音量を下げた。
光流は興奮気味に喋り続ける。
「ゆき乃、伊藤安次郎さんを覚えてるか? 吉原の…」
吉原という名詞は小声だった。
「はい。幽霊の…」
「京都の実家まで魂を送ってったお礼が今、届いたんだ」
「はい? えーと…」
幽霊である伊藤安次郎がどうやって、何を届けたというのだろう。
ゆき乃は理解出来ずに首をひねる。
「いーから、今から来い!」
「え!だって神霊入れの儀式って今日ですよね?忙しくないんですか?」
「…まだ時間あるし」
「それに私いま、先生と巻物の解読をしてて…」
「じゃあ、センセも連れて来いよ。じゃあな!」
「え! あのっ!」
プー、プー…
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