神霊入れの儀

4/17

4393人が本棚に入れています
本棚に追加
/291ページ
「……」 ゆき乃は通話の切れた携帯を見つめた。 「行きましょうか。主(あるじ)さまのご命令ですし」 豊川は早速、机の上を片付け始める。 「え…先生、会話聞こえたんですか?」 「フフ、すみません。…耳は良い方なんです」 「そうですか」 やはり豊川は普通の人ではない。 荼枳尼天の化身なのだ。 ゆき乃は改めて、そう思った。 「あ、でも先生?私と外を歩いても大丈夫ですか?」 ゆき乃は教師と生徒という立場を気にした。 豊川は顎に手を当てて少々考え込む。 「んー、大丈夫でしょう。いざとなれば、この眼を使いますから…」 そう言った豊川の濃茶の瞳は金色に変わり、強く輝いた。 「先生…」 その金の瞳を見たゆき乃は、何もかも受け入れる気持ちになる。 それは豊川のマインドコントロールの能力だった。 人間の社会に紛れて暮らすには、やはり何かと矛盾が生じてくる。 そんな時に金の瞳は有効な力だ。 「ね?」 豊川はニッコリと笑った。
/291ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4393人が本棚に入れています
本棚に追加