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起承転結の起。
初春の中を小鳥が爽やかに歌うその日の朝、恐怖の化身が斉藤和樹の家の階段を昇っていた。
しかし彼はベッドで無邪気に惰眠を貪っていて、スレンダーで眼鏡をかけた優しい先輩と無邪気で可愛いお姉様が弁当を作ってくれてそれを二人がアーンしてくれるという楽しい夢を見ており、それに気づくはずがなかった。
やがてそれは階段を昇りきると、部屋のドアをそっと開けスルリと身体を滑らすように中に入り慎重に戸を閉める。 そのまま音を立てずにベッドのある窓際へとゆっくりと進んでいき、夢の続きをニヤニヤと楽しんでいる和樹を見下ろす位置に立つ。
寝ているのを確認するとそいつはしばらく彼の顔を(寝顔)を見つめ、顔を近づけて……何事かを耳元でささやく。
「う~ん……駄目だよ……俺は」
ニヤニヤと笑っていて起きない。 もう一度今度は先程より大きい声で話しかける。
しかしそれでも彼はさらに下品な顔を浮かべてなにやらブツブツ言っている。
和樹がそれで起きないのを見て溜息をつくと、彼女はやり方を変えた。
薄い唇を開いて息を肺の中に取り込む。 そしてまるで人工呼吸をするように彼の顔に自身の唇を近づけていき……、
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