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「朝よ!とっとと起きろ!」
死者すら飛び起きそうな大声で叫びながら渾身の力で鳩尾に拳を叩きつける。
ゴリュリュと小腸が圧力で腹の中を動く音を彼は確かに聞いたのだった…………。
まずはじめに言っておきたいことがある。
これは誰かと仲良くなって付き合う話じゃない……むしろ腐れ縁をどうにか切ろうと悪戦苦闘した高校生の物語だ…………たぶん……そう思う……ちょっと自信がないけど……。
「ぐはっ……だ、誰だ……?」
それこそ身体をくの字に曲げて悶絶しながら目を開けると、よく知っている存在が不敵に笑いながらそこには立っていた。
そいつは他人の安眠を邪魔した事など最初から歯牙にもかけず俺を見下ろして、満面の笑みで朝の挨拶をする。
「おはよう、朝だよ」
「み、瑞樹……?いき……な……何……を」
完全に油断していた状態でまともに食らった為、上手く声がでない。
「何って……、起こしてあげたのよ」
そんなことも知らないの? といわんばかりの表情で、さらに勝ち誇ったように腕を腰に当てている。
「そ、そうい……うこと言ってる……じゃなく……て、何故……他人の部……勝手に上がっ……」
鳩尾を抑え、傷だらけになったCDのように声がところどころしか出ない俺を瑞樹は不機嫌そうに睨んだ後、早口で理由を答える。
「ああそれはあんたが私の迎えに来なかったからよ私がこないだ彼氏と別れて自転車に乗せて行ってくれる人がいないの知ってるでしょ?なんで迎えこないのよ!」
「し、知るか……そんなの初めて知ったわ……大体なんで俺がお前を送っていかなければならんのだ?」
やっと声が出せるようになって俺が文句を言うと、
「簡単なことよ…………」
瑞樹は解りきってるでしょ? という様子で片目をつぶって人差し指を俺に突きつける。そしてニコッと笑って……、
「幼馴染だからでしょ?」
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