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「夢魔らしく、相手してやったらどうだ? 得意だろう? 男から精気を吸い取るのは」
PSG-1のマガジンを抜き、首から下げた赤外線双眼鏡を覗く。
夢魔に間違われても仕方ないレイラ・ボスワースが、ベストを肩に掛けてイヤホンマイクを口に寄せていた。
『流石にお前には負けるぜ。おっと、お堅い連中がガン首揃えて遅刻してきたぞ』
暗闇に紛れるような、全身真っ黒な装備の別働隊が入っていくのが見えた。
彼らと対面するのは武装解除されて気を失ったゴロツキ共だけだ。
遅刻も良いところ。やる気のないジュニアハイスクールの連中でもしない、説教を食らうような大遅刻だ。
『チンピラ共の処理は奴らに任せるか。そういや、この近くに旨い中華料理を出すレストランを知ってんだ。帰りに寄っていこうぜ』
「お前の軽い財布なら、大した店じゃないな」
『うるせぇ。安くちゃ悪いかよ』
「いや、楽しみにしている」
パンツルックのダークスーツに付いた埃を払い、セミロングの黒髪を耳にかける。
慣れた手つきで分解したPSG-1をケースに収め、肩に担いだ。
「もちろん、奢りだろう?」
『お前のな』
「悪くない。高い店でないことを祈る」
相棒との冗談の言い合いに橘京香は口元が緩んでいた。
今日の仕事は終わりだ。適当に報告して、さっさと飯にしよう
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