#1プロローグ

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 しかしそれもただの偶然では有るにしろ、1世紀程前。そうこの時は、海に住む民と言うものを知らずにいた、フォルテリゼの部族間の闘争に於いて一人のまだ名も知られない平和を得たいという大志を抱いていた騎士が、海を挟んだ戦で背に傷を負いながらもその海に沈んでしまったということがことの始まりだろう。偶然その海域でリュウールの民にとっての海底食物である、シエルを摂りに来ていたリュウールの皇女に助けられた事により生きながらえたと言う説話が残っている。  実、説話と言うのは可笑しいだろうか? 実際その騎士は今も生きているので有るのだから。  騎士を見た皇女は、海を汚す夥しい血液に驚きはしたものの、その騎士に看病の際食料としてシエルを分け与える事で、命を繋がせた。そう、シエルは地上の民にとっての、生命線を繋ぐ、不老不死の妙薬であったなどとはこの時のリュウールの民は知る筈もなかったし、ましてや、フォルテリゼのこの騎士すらも。  しかしその事により、最終的に海底都市から生還したその騎士は、その不老不死の血肉を得たことにより、念願であった平和への糸を紡ぎ夢を叶えた。そう全てを統治することの出来た、フォルテリゼ国の王となったのである。そして、これを期にフォルテリゼとリュウールの国交が一方的ではあったにしろ時を経て緩やかに始まった。
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