2、乗り込む女、嫌がらせ男

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...気まずい。 朝から、この気まずい私は何なのだろう。 喫茶店のカウンターの奥から、こっそりとあの男がコーヒーグラスに手を取るのを見つめている。 今日は珍しく会社の同僚を連れて来ている。 また、偉そうに長い足をほおり出して、自慢してるのか...。 アイツの笑ってるとこは初めて見るけど、どう見たってイヤミな笑顔にしか見えない。 嘘臭い笑顔はあんただろう、全く。 あっ、アイツまたコースターに書いてる。 しかも、お連れ様のコースターにも何か書いてる。 信じられない。 今日コーヒー入れたのも、運んでやったのも私じゃないでしょ。 なのに、相変わらず酷い男。 あんたはマズイかも知れないけど、私は昨晩の一件で気マズイ。 ゴロを合わせてる場合か私。 早く帰れ、オッサン! あんな事をしといて、平気でよく普通にコーヒーを飲みに来るよな。 やっぱり変な男。 正常な心の持ち主だとは思えない。 異常だよ、異常! 私も知らないふりをして、なるべく近くに寄らないように仕事をしていた。 すると、ブツクサと声が聞こえてくるではないか。 「あの、突っ立ってる女の笑顔が気に入らないねぇ。何か嘘臭くてさ、イライラしてくるんだよねぇ。アイツ、アイツ...あの女」 アイツって? あの女って、どの女? 私は辺りを見渡してみる。 嫌がらせ男が連れの男にわざとらしく、私に聞こえる声で言っていた。
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