593人が本棚に入れています
本棚に追加
...気まずい。
朝から、この気まずい私は何なのだろう。
喫茶店のカウンターの奥から、こっそりとあの男がコーヒーグラスに手を取るのを見つめている。
今日は珍しく会社の同僚を連れて来ている。
また、偉そうに長い足をほおり出して、自慢してるのか...。
アイツの笑ってるとこは初めて見るけど、どう見たってイヤミな笑顔にしか見えない。
嘘臭い笑顔はあんただろう、全く。
あっ、アイツまたコースターに書いてる。
しかも、お連れ様のコースターにも何か書いてる。
信じられない。
今日コーヒー入れたのも、運んでやったのも私じゃないでしょ。
なのに、相変わらず酷い男。
あんたはマズイかも知れないけど、私は昨晩の一件で気マズイ。
ゴロを合わせてる場合か私。
早く帰れ、オッサン!
あんな事をしといて、平気でよく普通にコーヒーを飲みに来るよな。
やっぱり変な男。
正常な心の持ち主だとは思えない。
異常だよ、異常!
私も知らないふりをして、なるべく近くに寄らないように仕事をしていた。
すると、ブツクサと声が聞こえてくるではないか。
「あの、突っ立ってる女の笑顔が気に入らないねぇ。何か嘘臭くてさ、イライラしてくるんだよねぇ。アイツ、アイツ...あの女」
アイツって?
あの女って、どの女?
私は辺りを見渡してみる。
嫌がらせ男が連れの男にわざとらしく、私に聞こえる声で言っていた。
最初のコメントを投稿しよう!