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私は花屋のバイトを急遽夕方までで交代してもらって、19時頃までアイツがいる○○製作所の前で待っていた。
車だからって見逃さない。
私の裸眼1.5の視力をなめるなよ。
動体視力だっていいんだから。
嫌な奴の顔は絶対、忘れない。
しかし待てども待てども、20時になっても現れない。
まさか、私は見逃したか...。
私は待ちくたびれた表情で、門の前の隅っこで座りこんでいると、
「あれ、喫茶店の女の子」
あっ、今朝のアイツと一緒にいたお兄さん。
優しい人には、同じ30代でもお兄さん。
アイツはオッサンで十分でしょ。
「こんばんわ、どうしたの?もしかして流を待ってるの?」
「はい。あの人、ナガレって言う名前なんですか?」
「そうだよ、杉原 流(すぎはら ながれ) だけど。用事かな?」
杉原 流...。
ケッ、変な名前。
「いえ、あの今朝の事で...」
「そうだよね、今朝はごめんね。怒ってるよね。でも、あれが流そのものだから。本当にごめんね」
あれが、あんな凶器的な性格がアイツそのもの?
じゃあ、全然人間としてダメじゃないの。
「もうすぐ出てくると思うけど、一応メールしとくから、もう少し待ってるといいよ。流は自転車だから、簡単に捕まるはずだから。本当に今朝は申し訳なかったよ」
「いえ、お兄さんが謝る事じゃないし...」
「ただ、君が思ってるような人間ではないからさ、許してやってよ。また、美味しいコーヒー飲みに行くからね」
「はい、有り難うございます」
優しいお兄さんは、手を振り爽やかに立ち去った。
ふぁ~っ、優しい。
何て優しい人なんだろう。
何故にあんな優しい人と一緒に居ても、アイツは最悪なんだろうか。
っていうか、杉原 流なんかと一緒にいちゃダメ!
もう少しだけ待って、来なかったら帰ろっと。
私は座って、うつむいて再び一時間近くボーッと待っていた。
自転車が、ブレーキをたてる音がした。
見上げた先には、
「なんだ、おまえ。まだ居たのか?」
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