2、乗り込む女、嫌がらせ男

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吸いかけのタバコを投げ捨て、おもむろに乗っていた自転車をそのまま地面に倒した。 右腕は掴まれたまま。 私は言った。 「自分に正直だなんて、あんたは単なる性格が悪いだけでしょうが。キレイごとみたく言うんじゃないよ」 「へぇ、言ってくれるねぇ。喧嘩売ってんの?」 「それは、あんたがでしょ!」 そうやって、何かにつけて挑発ばかりしてきて。 話にならない。 まともじゃないよ、コイツ。 「面白いねぇ。これは益々毎朝コーヒー飲みに、おたくの店に行きたくなったよ」 私が何したっていうの? 何で、こんな目に合わなきゃならないの? 恨まれる事なんて、した覚えは全くないよ。 うつむきながら涙を落とす。 コイツがどうして、こういう事をしてくるのかを私は知りたい。 本当の理由を知りたい。 そうすれば、私だって少しは納得できる。 私は杉原 流を涙目で直視した。 ・・・・・・。 えっ? 何、今の。 コイツの直視は、私よりも強く感じた。 揺れない、動かない、止まったままの直視。 瞳の中にある、深い何かの中に、強さで固めた弱さみたいな...。 そんなものが一気に私の中に飛び込んでくる感じがした。 まばたきすらしないコイツの冷めた目に、私は何となく歪んでしまったコイツの何かが見えた気がした。 ただ、それを私が理解してあげられるかどうかは分からないけれど。 男としての、求めている何か...。 無意識に頭の中で流れた言葉。 ...知りたい...。 「...何だよ?」 低い声で言われて、ハッとした。 「べ、別に!」 慌てて、私は視線を逸らした。
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