1、喫茶店の女、感じの悪い男

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もうすぐ暑い夏がやってくる。 いつまでこんな生活を私は続けていくのだろうか。 朝は喫茶店でアルバイト。 午後は近くのスーパーの中にある花屋でアルバイト。 お金を貯めるって言っても、私もう34歳なんですけど。 結構、貯蓄してるんですけど。 2年前に何とか彼氏の時夫(ときお)と同棲まではこじつけたものの、今だにお互い何の変化もなく、こんな状態で生活を共に送っている。 結婚したい。 ウェディングドレス来てバージンロードを歩きたい。 いつになったら、決めてくれるんだろう。 そりゃあ、男にだって色々準備や精算しときたいことはあるだろうけど、あんまり待たせられたら不安通り越して不信感に悩むわ。 騙されてるんじゃないかって。 だって一応そのつもりで今は同棲してるんだし。 私の深刻な気持ちも知らないで、全く。 けれど、先に進めるためには今できる事をするしかない。 お金を貯めるために毎日頑張って働くのだ。 そんな私は近頃、朝の喫茶店でのアルバイトで嫌がらせを受けている。 慌ただしいモーニングタイムでの事だ。 近くに工場や会社が立ち並ぶせいか、朝はタバコを吸うムサ苦しいオッサンばかりが集う。 どういった嫌がらせかと言うと、アイスコーヒーの下にあるコースターにいつもボールペンで『マズイ』と書かれて置いてあるのだ。 何故、それが自分への嫌がらせかと思うかと言うと、私が確実に入れたアイスコーヒーで、私が確実に運んだからだ。 でも忙しくて、お客さんの顔なんて見ている余裕がなくて、ついつい忘れて仕事に没頭してしまい、犯人を突き止めるとこまでに辿り着けない。 結局今日も、うっかり忘れて見逃してしまった。
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