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家に帰ると、時夫の側へと近寄る。
「時夫、聞いて聞いて。今日は最悪だったの~」
「ふぅ~ん」
少し甘えてみるものの、時夫はそれどころじゃないとテレビのお笑い番組に釘付け。
全然私の半泣きの顔すらも見ないで、大笑いしている。
「ちょっとぉ、時夫ってば!」
「後にして、後に。今、いいところだからさ」
何コイツ。
私がこんな思いをして、慰めや同情を求めているのに、テレビを優先するだなんて。
一緒に住んでる意味がないじゃない!
同居人ですらの役にも立ってないないじゃない!
時夫って、一体何のために私の前に存在してるの!
「時夫のバカ!」
そう言っても時夫はテレビに大笑いをしていて、無駄に私の声が響いていた。
むなしくなって、腹が立って家を飛び出した。
どんだけ腹を立てても、どんだけ悩んでも、誰も何も返ってこないなら一人になりたい。
どっか一人で静かに落ち着く場所へ行きたい。
自分の落ち着く場所を求めて、私は自転車を走らせた。
近くのスーパーの前で自転車を止めた。
そこに花屋があって、閉店した後のそのスーパーをぼんやりと眺める。
そして、今日の不甲斐ない自分を振り返る。
「身が入っていない」「やる気のない人は要らない」
そう言われた時、胸が痛んだ。
その言葉が痛いと感じたのは、図星を貫かれたからだ。
そのまま自転車を走らせて、喫茶店まで行く。
ママは優しい。
「心配だから」
そう言って、ミスした私に休暇をくれようとしてくれた。
ママ、違うの。
わがまま言って何とか見つけた朝だけのバイト。
だから、短い時間しか居られないけど雇ってくれたことに感謝して出来るだけバイトに出て、返していきたいの。
私、頑張るからクビにしないで。
ギュッとまぶたを強く閉じた。
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