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「はい、ストップ」
「もう、止めないでよ」
「我慢して、よく聞いて。あのオッサン、作業服に○○製作所って刺繍が付いてた。その会社この近くにあるから間違いないよ」
「マジ?...待ち伏せして乗り込もうかな」
「ダメだよ、笑さんは女の子なんだから。笑さんのストーカーかも知れないよ、危険だよ」
女の子と若い子に言われて、心配してくれるのは誠に嬉しいけれど。
危険を恐れて何とする!
「とにかく、今は相手の目的が明るみになるまでは動かない方がいい。思うツボにハマらないように平常心だよ。何かあったら俺があんなオッサン負かしてやるからさ」
「う、うん...ありがとう、そうするわ」
この子の優しさに、私はうなずくしかなかった。
と、返事をしながらも○○製作所に来てしまった私。
花屋のバイトを終えて、こんな遅い時間に居るわけないだろうけど、来てしまった。
私は自転車から降りて、会社の門の前に仁王立ちをしていた。
とりあえず、ここでアイツは働いているわけだ。
まぁまぁ大きな会社じゃないの。
突然、車のライトが私を照らした。
ま、まぶしい。
私はまぶしくて、アタフタしていると、
「何してんだ、邪魔だ!」
シルバーの軽ワゴン車の窓から、眉を八の字にして睨み付けてくる男にハッとした。
ウゲッ!アイツじゃん!
まさかの、まさしく感じの悪い男じゃん!
「おまえは、確か喫茶店の女...」
バレたか。
「何でおまえがここに居るんだ」
男は車から降りて私の方へやって来た。
これはガチで今、言ってやるしかなさそうだな。
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