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人通りの多いメインストリートから外れ、コンクリートのビルで入り組んだ迷路のような路地裏を抜けた所に、野良猫や烏がどこからか持ってきたゴミ達にも勝る汚い店がある。看板さえも塗装の前後が剥がれている始末で、『STAR』なんていう洒落た名前に変わっている。元々の名前は知らないけど。
「また来たのか、飽きねぇな」
中で出迎えたのは、その汚い外内装に見合った汚い翁だ。歓迎されていないような台詞ではあるが、唇は意味ありげに釣り上がっていた。
「また来たよ。来たくは無かったけど」
「かっかっか。表情ひとつ変えずに減らず口たぁ、随分とご機嫌ナナメじゃねぇか」
STAR(正確には○○START○○だが)の店主は金歯をチラつかせ、軽快に笑う。店内を埋め尽くす、用途不明の何か達。それらと相まって共鳴し、心地好い不気味さを醸し出す。
「ナナメじゃない。僕はいつだって後ろ向きだ」
「ちげぇねぇな。ま、どうせまたダメだったんだろ」
「…………」
「黙るっつうこたぁ正解だな」
どうでもいい事に食いついてくるもんだ。
僕は、死ねない呪いにかけられている。とある条件を満たしてしまった数だけ命が増えるという呪いに。
嘘みたいだが本当の話で、事実僕は、何度も自殺したり、殺されたりしている。1000回を越えた辺りから数えていないが、不死を手に入れてはしゃいでいた昔の自分を本当に呪い殺してやりたくなるぐらいには死んでいる。
「前までは1ヶ月に1回のペースで死んでたのが、最近じゃ週1だ。なんかあったのか?」
「……なんも」
「なんも無くて自殺のペースを上げるのか? 自殺は苦しいだろ」
「…………」
確かに、自殺は痛い。死ぬほど痛い。だけど僕は死ねない。
――死にたいのに、死ねない。
「早く死にたい。それだけだよ」
それが、僕にとっての全てだから。
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