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(なあ、ガネ。お前進路希望調査なんて書いた?)
(ああ、オレか?オレは………)
Am5:00
フェンリル
オーレリア支部
コウジ・カネイユ
「…今日も任務か。」
何時からだったか…。
任務が憂鬱になったのは。
西暦2056年、彼は「オーレリア連邦空軍第6航空団第08飛行隊」から「フェンリルオーレリア支部対荒神第10航空偵察隊」へと所属を変えた。
伝説のグリフィス隊に憧れ、同じ空を飛ぶために空軍に入隊した彼を待っていたのは、ワケのわからない化け物を探し、見つけ次第報告と同時に一目散に逃げ出すという退屈な毎日。
彼がスロットルを握っても、その機体が化け物…"アラガミ"と戦い、人々を平和に導く事はなかった。
コウジ
「オレは国を守りたかったんだがな…。」
F-4Eの3機で編成された第10偵察隊の新隊長、コウジ・カネイユは上空1500Ftでひとりごちた。
ユウ
「人を守る事には変わりありませんよ、隊長。」
ガーネル
「そりゃあちっと違ぇんだよ、ユウちゃん。オレ達ァ、オーレリアを存続させるために命をかけたかったんだ。せっかく、南十字星の活躍でレサスを退けたってのに、次は人じゃないモンに滅ぼされちまうなンてな…。」
コウジ
「先輩…その話はやめましょう。」
今さら語ったところで虚しい事は目に見えている。
ガーネルは多くの中年男性の例に漏れず、彼の後輩に当たる若い女性隊員のユウに自分の過去を語りたいようだが、それでも任務中に横で聞くには気分のいい話じゃない。
2020年オーレリア戦争。
2046年南オーシア戦争。
南半球に位置するオーレリア連邦共和国を飲み込んだ二度の戦争において多大な戦果をあげた伝説のパイロット。コールサイン・グリフィス1。機体にペイントされた南十字星のマークからそう呼ばれた英雄も、2050年代に入りアラガミが出現した頃から消息を知る者はいない。
ガーネル
「ああ……そうだな。おっ、あいつらアラガミじゃねぇか?接近する!」
コウジ
「今回の隊長はオレですよ!もう少し様子を見ましょう!」
今回初めて隊長を任されたコウジの慎重さは過剰だった。鳥が木を揺らせば、リスが木の実を落とせば、号令をかけるのではないかというほどに。前隊長現副隊長のガーネルに呆れられるほどに。
最も、結果的に見ればその警戒心は意味を成してはいなかった。
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