望まぬ空

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飛行タイプの大型アラガミ、「サリエル」。"女王"の別称を持つこのアラガミの特徴は、鱗紛による感覚鈍化。今までも数え切れぬほどの偵察隊員が「女王に魅了された」との通信を最後に消息を絶った。支部でも捕捉できなかったアラガミを現地で偵察隊が捕捉できなかったとあらば続く結果は一つ。シグナルロストのポイントが支部に送られ、GE部隊に索敵の手間を与える、それだけだ。 入隊してまだ三ヶ月のユウが逃げ切れなかったのはわかる。しかしガーネルは違う。彼もまた二度の戦争を戦い抜いた歴戦のパイロットだ。その彼を、アラガミはいとも簡単に落とせてしまう。友情にも形見などを残してくれる"人同士の戦争"とは違う、これは"狩り"なのだ。すべては哺食され、彼等の血肉となり、力となる。 自分もまた、あと一分と持たずサリエルの毒牙にかかるだろう。そして、ブツブツいいながら最新鋭機を乗り回すGE部隊に仇を取って貰うのだ。 彼は狭い渓谷に誘い込み、サリエルをまいた。 コウジ 「死ねるか…まだ死ねるか…! こんなところで、使い捨ての偵察隊員で終わるために生まれてきたんじゃ…ここにいるんじゃないッ!!」 最も、激戦区と呼ばれる極東支部などでは偵察隊がアラガミに遭遇して生還できる確率を見ればそれこそ使い捨てと呼べる物で、徒歩でアラガミを見つけ走って逃げねばならない彼等と比べれば遥かに安全な仕事ではある。だがその事実も、エッグによる電波障害で妨げられ、オーレリアに届く事はない。 サリエルの雄叫びについて来たヴァジュラは、自らと比べものにならない微々たる雷を纏って飛ぶ餌を見つけ、大喜びで雷球を放った。 それはかつてレサスが開発したプラズマ兵器とは見た目こそ似通っているものの、威力の面において一線を画していた。その雷球がアラガミ達の持つオラクル細胞からアラガミの体内で作られるオラクルチップを用いて成される、強力かつ複雑な生物兵器である事をコウジは知らないが、当たれば機体と自らを哺食しアラガミ達の餌として適した姿に調理してくれる事だけはわかっていた。
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