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達也が目を見開いていたのは獣を殺した罪悪感からでは無かった。
彼の感じていたのはただ呆気ない、という思いだけだった。
命ってこんなにも脆いものなのか…。
達也は生まれて初めて生き物を殺めたが、自分でもビックリするくらい冷静だった。
すまんな…。
横たわる獣に対し、静かに謝罪と感謝をして獲物を片手にツリーハウスに向かって歩き出す。
ツリーハウスから少し離れた場所で獣を悪戦苦闘しつつも解体していた。
初めてということもあり、おっかなびっくりで始めた解体作業。
なかなか進まないが何とか終えて、肉を焼いて食べ始めた。
この時、達也は何ともいえない感情を感じていた。
「あれ…?」
なんで泣いてんの?
達也の目から涙が止まること無く流れている。
声を押し殺し、涙を拭きながら食べ進める達也。
食事を終え、涙も止まった達也は静かに火を見つめていた。
生きるって辛いな…。
「うん、難しいって言うよりやっぱ辛いわ。」
しばらくそのまま見つめていた達也は立ち上がり、ツリーハウスに戻った。
これから強く生きよう、と決心しながら。
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