プロローグ

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「暑い‥」  思わず呟いた。  呟いた所で、何一つ現状が変わらないのは百も承知なんだけど‥。  上空には灼熱の太陽。  歩いているのは砂漠。  思い付く限りでは一番暑いと思われる組み合わせ。  さらに目的地は遥か彼方ときたもんだ。  ‥何でこんな事になったんだ。  足を止め、どこまでも続いている砂漠を見つめながらぼんやりと考える。  だが考える必要などない。  理由は明白だからだ。  ――全ては‥あの女のせいだ‥。  あの女を思い出すだけで腹が立つ。 「太陽のバカヤロー!!!」  イライラを発散するために思いっきり吠えた。  …何やってんだ俺は。  直後、ものすごく恥ずかしくなった。  ま‥いいか。 誰も近くにはいないし…と安心しかけたが、俺は重大なミスに気付いた。 「くっくっく‥」  どこからか、耳障りな笑い声が聞こえてくる 疲労と気温のせいか、もう1人いた事を、完全に忘れていたのだ。  間違いなく聞かれた。  俺の人生で、ワースト3に入るぐらい恥ずかしい発言を、聞かれた。  そんな俺の様子を知ってか知らずか、 「ん‥聞いてないよ、何も聞いてないから‥くく」  笑いながら、フォローを一つ入れてきやがった。   腹立つ‥笑わないようにしてるのが余計に腹立つ‥。  ホントに…何でこんなことになったんだ。  思えば、ほんの数日前に起こったあの事件から、全ては始まった。 俺は、走馬灯のようにそれを振り返った。
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