孤高の決闘者

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デュエルが終わり、静寂が包んだ。 サキは自分の負けを理解しきれずに呆然としている。 ナノコとアイちゃんはサキを心配するように見つめている。 「俺の勝ちだ。もう俺に関わるな」 そんな中、ジンはカードをまとめてデッキにしまうと冷たく言い放ち、とっとと立ち去ってしまった。 待って、と声を掛けようとはしたけれど、約束は約束。 ボクは自分にそう言い聞かせて、思いとどまった。 「……ごめん、ティル」 ジンが退店して数秒後、サキがようやく言葉を口にした。 顔を伏せたまま、デュエルテーブルに置いていた手を強く握り締める。 「サキはよく頑張ってくれたよ。今のデュエル、サキが100%の実力で戦い抜いてくれたって分かってる」 慰めの言葉を向けながら、ボクは心の中で怒った。 サキに対してじゃない。自分自身に対してだ。 ボクが弱いせいだ。 デュエル部を復活させるのはボクがこの学校に今後も通い続けられるようにする為。 だからボクが責任を持って、ジンと戦わなきゃいけなかったんだ。 でもボクが弱かったから、サキが戦わざるを得なくなった。 これはサキがいけないんじゃない。ボクがいけないんだ。 「約束しちゃった以上、ジンは引き入れられないし……また明日から勧誘、頑張ろう!」 ボクは自分自身にも鼓舞するように大声で呼びかけた。 サキは変わらず顔を伏せたままだったが、ナノコとアイちゃんは「うん」と頷いてくれた。 入学条件の期日まで後3週間。 ボク達は再び途方に暮れる結果となってしまったのだった。
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