笑顔の裏には

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* ジンの勧誘失敗から、もう2週間が経過した。 つまりは、ボクの退学期限まで二桁を切ってしまったという意味でもある。 「うーん……」 後一人で、条件はクリアする。 だっていうのに、この2週間は全くの空振りだった。 「ティル、どう?」 ナノコがボクの名前を呼びながら駆け寄ってくる。 彼女の腕の中には、ボクと同じ様に何十枚にも束ねられた紙が抱きかかえられている。 どういうことかというと、ボクたちとサキとアイちゃんの4人で朝の正門前でビラ配りをしているんだ。 まぁ知り合いを当たる作戦はもう失敗したからね。 こうやって宣伝と勧誘をかけたビラ配りが最適なんじゃないかと考えたわけ。 「ダメだねぇ……。全然受け取ってもらえないや」 ナノコの問いかけにボクは首を振って答える。 実はこの活動、1週間くらい続けたわけなんだけど……。 日に日に受け取ってくれる人が減っているんだ。 「ティルくーん、全然減らないよぉー」 「はぁ……」 続いてアイちゃんとサキもボクの方へと歩み寄ってきた。 二人とも疲弊した表情をしているので、結果は自ずと伝わってくる。 「そっかぁ……。どうしよう」 ボクは嘆息している間にも、校門には結構な人数の生徒が通り過ぎていく。 だけど、校門前で立ち止まってるボクたち4人には一切目もくれない。 ──それどころか、障らぬ神に祟りなしと言わんばかりの態度でそそくさと横切っていく。 ボクとナノコはまだしも、サキとアイちゃんは学園内で有名な美人姉妹で人気も高い。 その証拠に昨日までのビラ配り成績は二人がぶっちぎりだった。 なのに今はこうだ。 幾らなんでも不自然すぎる。 ボクはこの明らかにおかしい状況に、何か人為的な介入があるのではないかと、頭の隅で考えていた。
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