笑顔の裏には

5/51
前へ
/258ページ
次へ
理事長室をナノコが礼儀正しく「失礼します」と言いながらノックすると、すぐにミヨちゃんが扉を開けてくれた。 「来たか。まぁ、掛けてくれ」 ボクたちの入室を確認した理事長が、前にここに来た時には置いてなかったソファーを手で示してくれた。 この理事長室の中心に置かれたソファーは、ガラスのテーブルを挟むように計2つ置かれている。 1つが3人掛けになってるけど、ボクたちは2:2で座った。 ソファーに腰を下ろすと、いっきに沈んだ。 とても柔らかく座り心地が良い。相当高そうだね、うん。 「あの、理事長。今回はどんな用件で私たちを呼んだんでしょうか?」 ボクがソファーの感触に酔いしれている間に、ナノコが理事長に本題を聞き始めた。 やっぱりしっかりしてるなぁナノコは。こういう役回りは彼女に任せた方が良いね。 ナノコに聞かれた理事長は一度座り直すと、話し始めてくれた。 「最近、生徒たちがデュエル部の勧誘に一切応じなくなったと思わないかい?」 「!」 それは今のボクたちが一番悩んでいる部分だ。 理事長はその真相を知っているのかな。 ボクたちが一斉に顔を上げると、理事長は顔の前で手を組んだまま続きを話し始めた。 「杏花家を知ってるかな。芹之女学院を経営してる、この街の元領主の家系なんだ。どうやら、今の状況には杏花家が関わっているらしい」 「アンカ……」 ボクはその名前に聞き覚えがあった。 でもそれはボクだけではないみたいだ。 「あの杏花家が……? 何の為に、アタシたちの邪魔をするって言うんですか?」 確かにそうだ。 ボクがあったアンカの人間──クィンは確かに元領主っていうのも頷けるお嬢様だったけれど、人は良さそうだった。 その家系の人たちがボクたちの邪魔をするようには見えない。 それに、ボクたちを邪魔する理由もよく分からないしね。
/258ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加