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「やっぱりいないか……」
いつもクィンが通っているという喫茶店に到着したボクだけれど、そこに彼女の姿はなかった。
何となくそんな気はしていたんだ。
もし本当にクィンの仕業なら、この喫茶店には顔を出さない気がしたんだ。
デュエル部の一員であるボクが知ってるところだから。
だから、後ろから突然声を掛けられた時は本当に驚いた。
「おい、沖川ティル」
「うひゃあ!」
驚きすぎて間抜けな声が出ちゃった。
ボクは慌てて姿勢を正し、振り返る。
そこに立っていたのはガタイの良い黒いスーツにサングラスを掛けた大きな男。
クィンに「アリサワ」と呼ばれてた、ボディーガードだ。
「キミが近くにいるってことは、クィンも傍にいるのかい?」
「お嬢様はここには居ない」
ちょっとだけ期待を感じたけど、クィンはいないのか……。
そう落胆するボクだったけど、アリサワは表情を変えずにボクに命令してきた。
「ここには居ないが、お嬢様がお呼びだ。俺に着いて来い」
「クィンが……?」
どうやらクィンはボクがここを訪れることを読んで、アリサワをこの喫茶店で待機させたみたいだね。
なら、ここに来たのは間違いじゃなかった。
ボクは嬉々として、アリサワの後ろに着いて行った。
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