笑顔の裏には

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ボクはアリサワによって車に乗せられ、結構遠くまで移動した。 高級感が出過ぎててむしろ居心地が悪かった車から降りると、まず鼻が潮の匂いを感じ取った。 それも当然、今ボクの視線の先には生命の母、青い大海原が見えているんだ。 と言ってもそれは視界全体ではなく、視界の左右に並んでいる工業用の倉庫みたいな建物によって大分遮られちゃってるから正面くらいにしか見えないんだけどね。 「シャッターに大きく13と書かれている倉庫に入れ、横にあるドアの鍵は開いている」 「そこにクィンがいるの?」 アリサワが腕を後ろに組んだまま指示をしてくる。 ボクは彼に問いかけてみるけれど、反応はなかった。 着いてきちゃった以上は、腹括って行くしかないね。 ボクはそう心に決めて、彼の言う通り丸の中に13と書かれたシャッターを探した。 軽く見渡すだけで見つかったけどね。左側にある海から2番目の倉庫だ。 そこに駆け寄り、シャッターとか別の壁にあるドアの前に立つ。 「……行くぞっ!」 自分に喝を入れてから、ボクはドアノブを捻った。 ギギギ……という錆びた鉄が悲鳴を上げる音がする。 どうせこれでバレたし、と思ってボクはコソコソせずに堂々と入口をくぐった。 「お待ちしてましたわ、ティルさん」
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