笑顔の裏には

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「ですがわたくしもこのままあっさりと行ってしまっては面白くありません。よってティルさんにチャンスをあげます」 クィンは語りつつ、袖口からデッキを取り出した。 そしてそれを、前へと突き出す。 「わたくしとデュエル致しましょう。貴方が勝てましたら、デュエル部の噂についてはわたくしが責任を持って消しましょう。ですが負けました場合は、この時点で花嶋学園のデュエル甲子園出場は終わりとさせて頂きます」 「……」 ボクの勝敗で、今後の命運が決まるってことか。 さすがに気後れして黙っちゃってると、クィンは何故か空いている左手を挙げた。 それは合図だったらしく、突然クィンの後ろの全面を覆っていた黒のカーテンが左右に開かれた。 「っ!! ナノコ! サキ! アイちゃんっ!!」 そこには頑丈そうな檻の中でボクの仲間の3人が横たわっていた。 一切反応はないけど、僅かに動いてる気がするので……きっと眠らされているんだろう。 「分かりましたか、ティルさん? 貴方は受けるしかないのです、このデュエルを」 温厚なことを自負していたボクも、さすがに冷静さを失う。 クィンが完全に悪い子ではないと思っても……これは見過ごせない。 「ボクがデュエルを受ければ、ナノコたちを解放してくれるんだよね?」 「無論、ですわ。勝敗に関係なく、デュエル後に檻から出すことを約束致します」 それを聞いたボクは安心した。 なら、ボクはデュエルを受ける。 勝ち負けが関係ないなら。それで3人が無事なら。 例えボクが負けて、退学になったとしても構わないんだから。
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