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「ふ、ふふ……そうですわティルさん。貴方は他人を犠牲にしてまで我を通せない、優しくて──弱い御方。さあ、《ブラック・パラディン》の効果発動をキャンセルしてくださいな」
「……仕方、ないよね」
クィンに諭され、ボクは腹を括った。
彼女の言う通りだ。
ボクは自分が我がままをいうことで誰かが傷つくのが嫌だ。
そうなってしまうくらいなら、ボクは諦める。
その結果、自分の境遇が悪くなってしまっても一向に構わない。
──だから、ボクは……画面の『いいえ』をタッチしようと、
「デュエルを汚す真似は許さない。絶対にな」
「えっ!?」
突然、天井の方から声がしてきてボクは寸前で指を止めてしまった。
視線を真上に向け、声がしたと思われる地点を見つめるが、そこに人影はない。
と、思いきや同じ声が今度は真横から聞こえてきた。
「杏花クィン。お前はいざとなれば相手を脅して勝利をもぎ取ればいい、と。そう考えてるから、お前は成長できていない」
語りつつ、ナノコたちが閉じ込められていた牢の目の前で立っているその人物は、
ボクたちが勧誘し、そして失敗してしまった。
タツガミジンだったんだ。
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