笑顔の裏には

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「辰神さん……一体何の用です。この一件は今の貴方には関係なかったはずでは?」 クィンは涼しい顔でジンに話しかけるけど、さすがに計算外だったようで、その表情が必死に取り繕われたものなのが見てとれる。 ボク自身もジンの言葉によって、まだ『いいえ』は押していない。 「ジン、君がどうしてここに……?」 「デュエルは1対1の、文字通り決闘。互いの力を比べあうものだ。人質をとって、いざ敗北しかけたら脅しに入る、なんていうやり方が気に食わないのさ」 ジンは立ったまま口を開く。 デュエルを重んじる心は、きっとボクより深い。そう思える言葉だった。 「お前は以前から裏で工作をしていた。保険を掛けて、デュエルの舞台に上がっていた。そこのヤツは言う通り、それが誰かの命令で実行したことかもしれないが──今の強行はお前の独断。つまり、デュエルを汚したのはお前自身だ」 「……っ」 ジンがゆっくりと一歩を踏み出し、クィンがそれに怯えるように体を震わせる。 彼が何をしようとしているのか、ボクには分からない。 でも、 「待って、ジン!」 ボクは声を張り上げてジンを止めた。 彼はまるで分かっていたかのように、即静止した。 止まったのを確認して一安心してから、ボクは正面を、モニターに映るクィンを見る。 「クィン、悪いけど」 そう言いつつ、宙に漂わせていた人差し指をモニターに触れさせた。 『はい』、の部分に。 「今回のデュエルはボクの勝ちだよ」 《ブラック・パラディン》の攻撃が通りようやくクィンのライフポイントが0になった。
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