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「クィン」
ボクは立ち上がり、デュエルシミュレーターを挟んで向かいに座っている彼女の方へと歩み寄る。
俯いていたクィンだけれど、ボクが近付いたのに気が付いて顔を上げた。
その目尻には小さな雨粒が浮かんでいた。
「……ティルさんの仰った通り、わたくしが花嶋学園デュエル部の邪魔を仕掛けたには、お父様の命令されたからですわ」
「やっぱり、そうだったんだね」
クィンが自らそんなことするわけない。
「ですが、わたくしが実行し皆さんを拉致し、脅した事実に変わりはありませんわ」
言い終えた直後、クィンは立ち上がりボクへ一歩近づく。
彼女の瞳には深い謝罪の念と強い意志が介在している。
「この一件の収束は、わたくしにお任せください。流した噂はきちんと消しておきますわ」
そう語る彼女。
噂を消す、なんてのは難しいだろうけど、デュエル部の評判が下がっていくことはもう無くなる。
でも、今回の問題はそれだけじゃない。
「クィン、君自身のことは……」
「それも、わたくしが自分で何とか致します」
ボクが喋っている途中で、クィンが遮るように強く言い張る。
しかしいくらボクでも心配になってしまう。
今までお父さんに従い続けてきたクィンが、物申すことができるのかな。
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