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「心配はいりませんわ。今のわたくしにはティルさんが居ます」
唐突にボクの名前を出したクィンの表情はちょっとだけ、嬉しそうに笑みを浮かべていた。
「ティルさんと初めてお会いした喫茶店。あそこはわたくしが通う場所の中で唯一、自分の意志で寄るようになったお店です」
それを聞けば、今までの彼女の境遇が大体察することが出来る。
「そしてそのお店でわたくしはティルさんと出会いました。お父様の息がかかってない場所で、友人が出来た。それはわたくしにとって、初めて自由なことが出来た気分でしたわ」
クィンは目を瞑り、その時の喜びを思い出しているんだろうか。
確かにあの時のクィンは、とても楽しそうだった。
「わたくしは自らの意思を手に入、お父様の命に従うだけなのは嫌だと思えるようになれましたわ。ですから、もう大丈夫です」
ハッキリと言い切ったクィン。
今度はナノコたちの方を向くと、深く頭を下げた。
「これだけで貴女方への罪が償えるとは思っていませんわ。ですから、必ず皆様の元へ戻ってきますわ」
「あんた、アタシたちがその言葉を信じると思ってるの!?」
そんな彼女にサキが一歩前に出て反抗する。
でもそれは当然の反応だ。自分たちの評価を下げる噂を流し、更には誘拐させた張本人の言葉を、すぐに信じるなんて無理だと思う。
でも、突っかかったのはサキだけだった。
「私は信じるよー!」
「ティルが信用してるんなら、私も信用する」
アイとナノコはクィンに向けて頷いてくれた。
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