笑顔の裏には

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──── ─── ── * 「お嬢様、到着いたしました」 「ええ、ありがと」 静かに停止したベンツから降り、わたくしは自宅であるお屋敷へと戻ってきた。 同じ様なベンツが何台も止まっている車庫へ足を付けると、屋敷の入口の方から、和装をした女中が数人こちらに向かってくる。 「お父様は、お部屋にいるかしら?」 「はい。お嬢様のお帰りを自室でお待ちしております」 女中の一人に確認を取り、わたくしは複雑な気分になったわ。 目的が果たせるという想いと、これからお父様に対峙しなければならないという想い。 わたくしは何とも言い難い気持ちのまま、「お父様の部屋に行くわ」と告げ、足早に歩き始めた。 お屋敷の、玄関から一番遠い和室がお父様のお部屋。 わたくしはその手前の襖の前に辿り着き、そこで正座をした。 「お父様。杏花クィン、只今戻りました」 「ああ、入れ」 すぐに襖の奥からお父様の声が聞こえてきたわ。 わたくしは下げていた頭を上げ、正座の体勢のまま襖を開けた。 「失礼致します」 部屋の中は然程広くはなく、数個の棚と机が置かれいているのみ。 そしてその机の置くに、立ったままの和服を着た白髪の男性──お父様が居た。 一見すると優しそうな人相をしているけど、裏では明言はできないようなことを幾つもしている。 それを知っているわたくしは、お父様を視認すると軽く恐怖で震えてしまった。
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