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お父様は正座をしたままのわたくしを見下ろし、まず一言告げましたわ。
「報告を聞いた」
「……はい」
それは既に分かっていたことだった。
お父様はわたくしがティルさんに負けてしまったことをとっくに耳に入れ、わたくしの処分を決めている。
「お父様のご期待に沿えず、申し訳ございませんでした。何なりと御処分をお申し付けくださいな」
再び頭を下げ、お父様に促す。
わたくし一人の処分で済むなら安いものですわ。
せめてティルさんたちだけは……。
「よい。手は打っておいた。じきに彼らに制裁が下る」
「──っ!」
わたくしはお父様の言葉の意味を瞬時に悟り、立ち上がる。
「お待ちになってください、お父様! ティルさんたちは無関係です。わたくしに処分を!」
そう大声を出したわたくしを、お父様が睨みつける。
わたくしは恐怖で逃げ出したくなる衝動に駆られたのだけれど、それを必死に抑え込んだ。
わたくしはお父様から逃げないと、ティルさんと誓ったのだから。
「ティルさんたちを、お父様の花嶋の学園長への復讐の道具にするのはやめて下さい。わたくしはどうなっても構いませんから」
胸の上に手を置き、自分の意見をハッキリと述べる。
喋り始めたら、案外スラスラと言うことができた。
「……クィン。父に意見するのだな」
お父様の目がより細く研ぎ澄まされる。
わたくしは死の恐怖さえ感じたけれど、お父様を見つめ返す。
「クィン、惚れたな。あの少年に」
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