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わたくしが、ティルさんに惚れている……?
お父様の言葉を聞いて、わたくしはようやく自らの感情に気付けた。
「……はい、その通りですわ」
小さく頷いて肯定する。
「惚れた男を守るために、自らを差し出すか」
わたくしの答えを聞き、お父様は一歩近づく。
「儂が命じれば、お前は杏花の名を失い、男どもの慰み者として堕とすことも容易いぞ。それでも、進言するか?」
好意を確認した上での脅しの言葉。
わたくしは一瞬だけ身体が震える。
初めてはティルさんに……。
でも、彼を守る為にわたくしは迷うことをやめた。
「──構いませんわ。ティルさんたちから手を引いてくださるのであれば、わたくしがどうなろうとも」
お父様の事をしっかりと見据える。
変わらずお父様の表情は読めなかった。
「では、お前に処分を下そう。その処分を受け入れ続けている間は、彼らに手を出さないと約束しよう」
お父様はそう言うと、部屋の外に居る女中を呼んだ。
その女中は一枚の紙を手にしていた。
「先程のはただの脅しだ。お前は杏花家の一人娘。跡取りを残す為には必要だ。よって、儂が決めた男と婚姻を結んでもらう」
「……分かりましたわ」
望まぬ相手との結婚。
ティルさんを好きだと気付いてからのそれは悲しさを感じたけれど、慰み者に堕ちるよりはずっとマシだと心を切り替えた。
わたくしの人生を捧げることで、ティルさんが救われるなら、本望だわ。
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