一縷の望みを懸けて

2/28

31人が本棚に入れています
本棚に追加
/258ページ
「《ノヴァ》の効果にチェーンして、永続罠《竜魂の城》を発動だよ」 「っ!? そのカードは……っ!」 俺は一つ教室に隣接している廊下で、あるデュエルを眺めていた。 片方はサイバーデッキを使う新原教諭。 先程、理事長から渡されたデッキだというのに、元々自分のものだったかのように扱っている。 恐らく相当の手練れだな。 片や、出自不明の飄々とした金髪の男。 先刻まで学園内を騒がせていた渦中の人物だが……随分と古めかしいカードばかり扱う。 「墓地の《レッドデーモンズ》を除外して、フィールド上の《メテオブラック》の攻撃力を700ポイントアップさせるよ」 《メテオブラック・ドラゴン》と《サイバー・ドラゴン・ノヴァ》の攻撃力が4200で並ぶ。 戦闘と行っていた2体は相打ちとなり、墓地に送られる。 「速攻魔法《サイクロン》を発動するよ。これで《竜魂の城》を破壊するね。──再び舞い戻れ、《レッド・デーモンズ・ドラゴン》!!」 「……やるな、あいつ」 不思議な男だが、俺は金髪の男のプレイングには何か光るものを感じた。 最終的には、このデュエルに負けてしまったがな。 デュエルが終わるのを見届けると俺はその場を去ったが、次の日にこの金髪の男が編入したのを知った時は、退屈な学園に多少の楽しみができたと、一抹の喜びを感じた。
/258ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加