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デュエル甲子園の締切まで、残り三日となってしまった。
つまりボクは後三日でデュエル部を創り上げなければ、学園を去らないといけない。
ナノコたちと必死に勧誘活動を続けているけど、新規入部希望者は一切現れなかった。
「もお、ティル! アンタは何で平然としていられるのよ! 何とかしないと、三日後には退学になるのよ!?」
ボクが焦っていないことに苛立ちを感じたのか、サキが両手を腰に当てながら言ってくる。
でもそれは、人のことで怒ってくれる彼女の優しさだ。
「……そうだね」
サキの言葉に同意し、座っていたボクは立ちあがる。
そして、ずっと考えていたことを口にする。
「勧誘をやめて、部室でデュエルしよっか」
「え?」
唐突な提案に、サキだけじゃなくて残る二人もボクに視線を向ける。
そんな彼女たちに、ボクは説明をする。
「この三日、誰もこない勧誘に時間を捧げるよりも、残り三日を楽しんだ方が後悔しないかなってずっと考えてたんだ」
「ティル……諦めちゃうの?」
ナノコが駆け寄り、問いかける。
それにボクは頷く。
「別に退学になるだけで、死んじゃうわけじゃないしね。学園の外でなら、サキやアイとだって会える」
「で、でも!」
サキがそこで声を荒げる。
その瞳は潤んでいるようにも見えた。
ボクは自分の為に泣いてくれる優しい彼女に感銘を受けつつ、続きの言葉を手を出すことで制する。
「いいんだ、もう。さっ、部室に行こうよ!」
笑顔で彼女たちを引っ張って行こうとしたボクだったが、
このタイミングで、廊下の先から別の声が聞こえてきた。
「全てを諦める前に、確かめさせてもらおう」
「……ジン」
廊下の角から姿を現したのは、漆黒の髪に細い目付きが怖い印象を与える制服の下にパーカーを着た青年、ジンだった。
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