一縷の望みを懸けて

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「何の用よ! クィンの時もそうだけど、アタシたちに関わるなって条件出したのはそっちでしょ!?」 ジンが嫌いらしいサキが、真っ先に文句を口に出す。 けれどあっちは物ともしていないようだ。 「俺が出した条件は「関わってくるな」、だ。俺から関わる分には自由だ」 それを聞いたサキが「屁理屈こねてんじゃないわよ!」とまくし立てるが、ジンは無視してボクの方を見据えてくる。 ボクとしてもさっきの言葉が気になったので、早速聞いてみる。 「確かめるって言ったよね。何を確かめたいの?」 ジンは「フッ」とニヒルに笑い、少し語り始めた。 「俺がお前に注目し始めたのは、約一ヶ月前の新原教員とのデュエルだ。あのデュエルで光るものを感じた」 そっか、あのデュエルをジンは見てくれていたんだね。 負けちゃったデュエルなんだけどね。 「そして杏花クィンとのデュエルは、俺の期待以上だった。奴は姑息な手を使い敗北を回避した経緯はあるが、実力そのものは高い。少なくとも、《毒蛇神ヴェノミナーガ》を出したデュエルでは杏花は無敵だった」 《毒蛇神ヴェノミナーガ》。 確かにあのカードはとても強力だった。 《ガード・ブロック》で《デビル・コメディアン》を引けなかったら、タイミング良く《砂塵の大竜巻》を伏せていなかったとしたら。 勝ったには勝ったけど、あれはボクの運が良かっただけかもしれない。 「《ヴェノミナーガ》まで引き出した杏花に、お前が勝つとは思っていなかった。沖川ティル、お前の成長スピードには驚嘆した」 「ははっ、ありがとジン」 ボクがお礼を言葉を口にした直後、 ジンがポケットに入れていた手を抜き、ボクの前に突き出してきた。 その手には、デッキが握られている。 「俺とデュエルしろ。もう一度だけ、チャンスをくれてやる」
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