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「……ん」
真っ黒な視界の中、自らの声が聞こえてきた。
瞼を開けると、光が眩しいくらいに入ってきた。
ボヤけた景色が焼き付けられる。
ゴシゴシと目を擦ると視界は鮮明になり、ここが部屋の中だと認識できた。
「……簡素な部屋、だね」
部屋の中にはカーペットと布団、小さめの棚以外には特に何もなかった。
ボクは布団から起き上がり、部屋の出口と思われるドアを開けた。
「うーん……」
リビングと思われる部屋で、ボクは唸り声を上げた。
見覚えがなかった。
「まいった……誰もいないのかな?」
そんな疑問を口にした時───
『~~♪ ~~~♪』
鼻歌が聞こえてきた。
何だ、いるじゃないか!
ボクは慌ててその鼻歌の方向へ駆け出した。
次に着いたのは洗面所だ。
鼻歌は、更に先のドアの向こうから聞こえてくる。
ボクは特に深く考えずにドアノブを掴んだ。
今思えば、どうしてボクはこの時に思い浮かべなかったのだろうか……。
普通に考えて、その扉の先は───
「あ」
「……え?」
浴室だって、わかるハズなのに。
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