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「え!?」
「ちょっ! アンタ何しに来たのよ!」
後ろでナノコとサキが驚きの声を上げる。
確かにあの倉庫での一件以来、ずっと音沙汰なかったからね。
「お久しぶりですわ、皆さん。約束通り、戻って参りました」
ボクから離れ、後ろの三人にお辞儀をするクィン。
柔らかい感触がなくなり、少し残念な気持ちになった。
「……それにしても、よく戻ってこれたわね。アンタの父親、やばいんじゃなかったの?」
初めは怒りを真っ先に出していたサキだけど、ぐっと堪えて疑問を投げかける。
確かにその通りだ。
クィンはお父さんを説得できたから来れたのかな? だとしたらどうやって説得したんだろうか。
「勿論、お話しさせて頂きますわ。あの後、わたくしがどうなったのか──」
クィンは目を閉じ、そして語り始めた。
倉庫でのデュエルの後、「お父様」と対面したというその経緯を。
………………。
*
「では、お前に処分を下そう。その処分を受け入れ続けている間は、彼らに手を出さないと約束しよう」
お父様の指示を受け、女中がわたくしに一枚の紙を差し出してくる。
「先程のはただの脅しだ。お前は杏花家の一人娘。跡取りを残す為には必要だ。よって、儂が決めた男と婚姻を結んでもらう」
「……分かりましたわ」
それはつまり、望まぬ相手との結婚。
お父様は敢えてわたくしにティルさんに対する恋心に気付かせてから、別の殿方に身体を差し出せと言ってきた。……本当に冷徹な方。
しかし、想定していた仕打ちよりはずっとマシ。
元よりティルさんのお仲間に酷いことをしたわたくしに、彼と結ばれる資格なんてない。
だからわたくしは案外すんなりと受け入れることが出来たわ。
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