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女中から紙を受け取り、それを読み取ろうとする。
ですが真っ先に目に入る写真を見た瞬間、わたくしの思考は止まってしまった。
(え……?)
これが何を指し示すのか、頭の中がごちゃごちゃになっていると、
「……っく、も、もう限界だ! あははは!」
何故か急にお父様が笑い声を上げてきた。
不敵な笑みを浮かべる程度だったお父様が大声で笑う姿を見るのは初めてだったので、わたくしはより困惑してしまう。
「ははは……すまんすまん、クィン。実はな──全て儂と宗忠が協力して企てたことなのだよ」
更なるお父様の言葉に、わたくしは困惑が止まらない。
まず宗忠というのは花嶋学園の理事長である日堂宗忠さんのことでしょう。
それが指し示すことはつまり、
「嘘、だったのですか?」
「うむ、昔こそはいがみ合っていたがね。今は酒も飲みかわす仲だ」
二人の学園長が対立しているという話は、協力してでっち上げたのだとわたくしはようやく理解したわ。
でも、そこから更なる疑問が沸き出てくる。
「お父様は何故そんなことを?」
わたくしが尋ねると、お父様は笑いを収めて先程とは違った真面目な顔に戻った。
「今はもう足を洗ったが、儂は昔に表で言えないようなことを幾つもした。その際に何度もお前を手足のように利用してしまった。結果、お前は儂に逆らえない人形になったことが儂の心残りとなったのだ」
「……」
その言葉に、わたくしは何とも言えない気持ちになった。
確かにわたくしはお父様に逆らうことに途方もない恐怖を覚えてしまい、逆らえない身体になってしまったわ。
意志がないわけじゃない。けれどお父様に対しては、その意志の一切を示せない人間だった。
「そして儂は宗忠に相談したのだ。するとあいつは一人の男を紹介した。「最近、私も期待している子が居てね。彼に任せてみてはどうだろう」、とね」
「それがティルさん、ですか?」
わたくしが訊くと、お父様はゆっくりと肯定の頷きをしてきたわ。
ティルさんは日堂さんによって花嶋に仮入学しているので、あの人からの紹介なら納得だと思った。
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