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クィンの言葉を聞いたボクたちは互いに顔を見合わせ、困り顔になる。
ボクはそもそも怒ってるわけじゃないしなあ。
サキはどう思ってるんだろう?
そう考え、サキの方を見る。
「アタシは……」
自分が語るべきだと察したサキは口を開いたけど、逡巡してナノコとアイに視線を向ける。
「二人に訊いてもいい? アタシと同じ目に遭った二人に」
つまり自分と同じように連れ去られて檻に閉じ込められたナノコとアイが、クィンをどうしたいと思っているのかを聞きたいんだね。
サキに問われ、先に答えたのはナノコだった。
「私はきちんと謝罪の意を示してくれましたし、許すつもりです」
「それはどうして?」
すぐさま疑問をぶつけるサキ。
自分の判断材料にする為に、事細かに考えを知りたいのだろう。
「確かに攫うのは悪いことですけど、きっと私たちのことはとても丁寧に扱ってくれたと思うんです。現に怪我とか一切してないじゃないですか」
「それは……そうね」
ナノコの説明に頷いたサキは、クィンに視線を向ける。
意図を理解したクィンは静かに口を開いた。
「その通りですわ。あの時のことなので言い方は悪くなってしまいますが、菜乃子さんたちはティル様にデュエルをして頂くための交渉材料──人質でした。その為に必要なのは「デュエルを受けさえすれば人質を解放してくれる」という信頼。それは菜乃子さんたちを傷付けてしまっては得られなくなるもの。故に部下には丁重に扱いなさいと命じていましたわ」
クィンは目的があってのことだと語っているけれど、きっとそれは理由の一つなだけであって、
彼女自身の良心もあったんだと思う。
だってクィンはそういう子だからね。
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