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──あれから数時間経過して。
正直な話、ボクはこの先行きが分からずに不安の気持ちもあったわけだけど、
「そんな訳でティル君、しばらくの間宜しくねー」
ボクは結局、オキカワの家に残る事となった。
ホナミが戻ってきてから一度、「ケイサツ」という治安維持組織とやらに向かった。
身元不明だからもしかしたらボクはここでしばらく収監されるのか、と内心ビクビクだったわけだけれど……
しばらく話を終えるとケイサツからは、すぐに出る事が出来た。
記憶が戻るまでは誰かに面倒を見てもらって欲しいと言われ、その役目はホナミたちが担ってくれることになったからだ。
だからボクはこの家に居続けられることになったんだ。
「ありがとうホナミ! どれくらい経かるかわかんないけど、宜しく頼むよ!」
ボクは感謝の気持ちでいっぱいになり、ホナミに向けて思いっきり頭を下げた。
ホナミはそんなボクの頭に手を載せて、優しそうに笑みを浮かべた。
その笑顔がデュエルを終えた直後のナノコの笑顔と重なり、やっぱり姉妹なんだなぁと思った。
……まぁ、
「…………」
そのナノコは、ボクを物凄く睨んでるわけなんだけどね……。
「いい加減、機嫌治したらどぉ菜ノ子。ティル君だってわざとじゃないんだからさ」
「……別に怒ってない」
ホナミの言葉に明らか怒っている口調で返答するナノコ。
更に愚痴をこぼすように頬杖をつきながら続けた。
「起きた直後にいきなり私の……裸見るし、油断したらむ……胸触ってくるし……ティルと一緒にいると碌な目に遭わない。だから──」
だから、
ナノコはボクに完全に失望し、共棲するのに反対なんだ。
「出てけ」と言われると、そう覚悟した。
「だから、ルールを決める。ティルがこれ以上変な事しないように。……破っちゃダメだからね!」
「っ! ナノコ……」
けれどナノコの言葉は違った。
つまり彼女はボクが共棲する事を、許してくれたんだ。
「菜ノ子も素直じゃないなー。……で、良い? ティル君」
姉妹だからだろうか、ホナミはナノコの心情が分かったように含み笑いをした後に、ボクに確認を取ってきた。
ボクの答えは最初から決まっている。
だからボクは今出来る最大限の笑顔で言った。
「ありがとうナノコ! しばらくの間、宜しく!」
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