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………………。
「ふーん……理事長、そんなこと言ってたのね」
放課後になり、部室に集まっているメンバーに昼休みのことを伝えた。(もちろんジンはいないけどね)
そしてサキがすぐに返事をしてきたんだ。
以前なら、サキはまだあの件のことに眉をしかめたままだったんだろうけど、今の彼女はもう過ぎたことと言いたげな表情をしていた。
「ま、出るからには勝つ。ティルも良いこと言うじゃない。アタシだってデュエル甲子園、タダで帰るつもりはないわ」
更に拳を突き出すポーズをとって、強い熱意を口にする。
これだけデュエルが大好きなのに、よく今まで我慢できていたなあとボクは心の中で感心する。
それだけ、アイが大切なんだろうね。
「じゃあ今日も早速、デュエルしようか!」
ボクは便乗する形で、鞄からデッキを取り出そうとする。
しかし、それを制止する一つの声が上がった。
「駄目よ、ティル」
「え、どうして?」
サキにボクは疑問をぶつける。
デュエル甲子園で良い結果を残したいのなら、少しでも多くデュエルをして、研鑽を積むのが一番なのに。
「アンタ、来週に何があるか覚えてる?」
「来週?」
唐突な言葉にボクは理解が追いつかなかった。
来週……何があったかなあ?
…………あ!
ボクは少し考えたことで思い当たるものに行き着いた。
「ミヨちゃんの誕生日だね!」
「そうなの!? ──って、何でティルがそれ知ってんのよ! 違うわ!」
ボクの答えは違ったようで、サキはチョップでボクの頭にツッコミを入れた。
力は抜いてくれているみたいだけど、それでも痛い。
それに近しい女性の誕生日を把握しておくことくらい、当然じゃないか。そんなにおかしかったかな?
サキは「ホントに覚えてないのね……」と溜め息をついた後、その解答を教えてくれた。
「テストよテスト。学生で一番大切な試験が迫っているのよ」
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