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「テスト?」
その単語の意味そのものは分かっていても、一体何のテストを指し示すのかボクは分からなかった。
その様子を見ていたサキは「はああ」と大きく溜め息をついた。
「あんた、しっかりしなさいよ……。もし来週の学期末試験で赤点取っちゃったら、デュエル甲子園の為に練習時間が大きく削られちゃうのよ?」
「すみません、咲先輩。前に説明したんですけどね……」
「うふふ。うっかりやさんのティル様も素敵ですわ」
おっとそれは困るねと思っている間にナノコが申し訳なさそうに謝り、ずっとうっとりした目でボクを眺め続けているクィンは楽しそうに囁いた。
そう言えば、こないだ同じようなことをナノコに言われたかもしれない。
あんまりパッと来なかったので、つい忘れちゃってたみたいだ。
「アタシと藍は学年トップ10に入るくらいだし、菜乃子も新原先生からお墨付きを貰ってるから心配いらないし、クィンは芹之の頃に学内トップだったわ。辰神は……よくは知らないけど、どうせ顔出さないんだし赤点取ってたって問題ないわ」
サキは事前にリサーチ済みなのか、ボク以外の部員の優秀さを自慢げに語っていく。
ジンに対してだけは相変わらず恨みが込められていらけど……まあ仕方ないか。
そもそもジンは練習いらないくらい強いからね。
「つまり! 一番の不安要素はティル、あんたなの! ティルがどれくらい頭がいいのか未知数だからこそ、確実に赤点を回避してもらうの」
言いつつ、サキは自分の学生鞄の中を漁り始める。
そして机の上に出されたものは、五~六枚程のA4サイズの紙束だった。
「過去問をやってもらうわ」
「カコモン?」
ドヤ顔のサキに、ボクはつい意味を問いかけた。
それに対してクィンが「去年の学期末試験で使われた問題ということですわ。テストで出る範囲が大よそ被っていますので、試験勉強によく使われますのよ」と説明してくれた。
「あ、ティル良いなあ。咲先輩、私も一緒にやっちゃ駄目ですか?」
「ええ。そう言うと思って菜乃子の分も用意してあるわ」
勤勉なナノコはサキに自分の分をお願いしていた。
もう大丈夫なくらい勉強できているのに、凄いなあナノコは。
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