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ボクがこの家に住まわせてもらってから、2日が経過した。
昨日はホナミに連れられて「ビョウイン」という医療施設に向かった。
そこで医師の人に、ボクの記憶喪失は原因がイマイチハッキリしないと言われたが、外で様々な刺激を受ける事が記憶回復のカギになるとも教えてもらえた。
だからその後、ボクたちは生活に必要なモノの買い物をしていた。
時々、周りの人の視線がボクに集中するのが不思議だったんだけど、ホナミが「ニホン」で地毛の金髪とその顔立ちは珍しいからと教えられた。
まぁそんなこんなであっという間に1日が経過して、次の日の朝になっていた訳なんだ。
「おはよーホナミ……」
「おはよ、ティル君。相変わらず早いねぇ~」
まだショボつく目を擦りながら、ボクは既にリビングに隣接するカウンター付きキッチンで朝ご飯を作っているホナミに挨拶の言葉を掛けた。
ボクの事を早いねと褒めるホナミだけど、7時の段階で朝ご飯をほとんど作り終えているホナミの方がもっと早起きだ。
「ナノコはまだ寝てるの?」
「みたいだねー。ティル君、これお願い」
ホナミは優しい目をしながら言うと、カウンターに目玉焼きとスープを3人分載せた。
ボクがそれらをテーブルへと置いていく。
「後の準備はボクがしとくから、ホナミ起こしに行ったら?」
ボクはナノコとホナミの席の前に「ハシ」と呼ばれる二本の棒、自分の席の前にフォークを置きながら言ってみた。
けれどホナミは面倒な顔をして、
「えー、菜ノ子起こすの面倒なんだよぉ。ティル君が行ってよ~」
「いやいや、ボクは『約束』が……」
ホナミがボクに押し付けるが、それを受けることは出来ない。
ボクがオキカワ家に住む条件の内の一つに、『ナノコの部屋には許可なしで入らない』というのがあるんだ。
けれど正直、寝ているナノコにはかなり興味があるわけで。
「……まぁ、ホナミが「朝ご飯の準備中で手が離せないから、仕方なくお願いした」とか言ってくれるんなら、行ってもいいけど」
「アハハハッ! ティル君は自分の欲望に正直だねぇ♪ いーよ、いーよ、弁護したげるよっ」
ホナミはお腹を抱えて笑いながら、許可をしてくれた。
そうと決まれば善は急げだ!
ボクはすぐさまナノコの部屋に向かった。
後ろでホナミの「青春だねー」という呟きが聞こえてきた。
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