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……ええい! こうなったら強行突破あるのみ!!
ボクは縮こまりかけてた精神を立て直し、女の子の手を掴んだ。
「走って!」
「え!?」
女の子は訳が分からないと言いたげな表情を浮かべたが、ボクは構わずそのまま走り出した。
「逃がすかよ! 追うぞ!!」
男たちも当然の様に、ボクたちを追いかけ始めた。
太陽が真南に上ろうとしている昼下がりで、奇妙な鬼ごっこが始まるのだった。
………………。
「ハァ……ハァ……」
「アンタ……体力無いわね」
数分後、ボクはさっきの路地とほとんど変わらない位置のベンチで、荒い呼吸をしていた。
一緒に走ってくれた女の子は余裕綽綽を言った感じで、ボクの前に立っている。
ちなみにこの子に絡んでいた男たちは少し追いかけると、釣り合わないと判断したのか諦めていなくなってしまった。
……もし追いかけ続けられてたら、確実に捕まってたけどね。
「ねぇ、そのままで良いから答えて欲しいんだけど」
「……何?」
そんな事を考えていたら、女の子がボクに話しかけてきた。
整い始めた呼吸をしながら、ボクは承諾した。
「何でわざわざ助けたの?」
彼女は特別迷惑そうな顔をせずに、そう訪ねてきた。
わざわざと言うのは、人目に付きづらい路地で起きた出来事に首を突っ込んだ、という意味なのかな?
……けど、そんな理由なんて一つしかない。
「そりゃ、女の子が困ってたら助けるでしょ」
ボクは堂々と言った。
女の子が困ってたら助けるのが男の子の役目。
そうだって決まってる。
けれどそれを聞いた彼女は、
「……ぷっ」
何故か笑い始めた。
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