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「フフッ……ごめんごめん、まさか真面目な目でそう言う人がいるなんて、思っても見なかったから」
そんなの当然じゃないか? とは思ったけど、
女の子が笑顔になってくれたので、ボクは満足した。
「咲」
「ん?」
突然、女の子が謎の単語を発した。
……サキ?
「アタシの名前よ。坂江咲って言うの」
「あ、なるほど。えっと……ボクはティル」
名前だったのか。
サカエサキ……うん、彼女らしい良い名前だね。
「ティル……やっぱり外国人なのね。ファミリーネームは?」
「あー……えっと」
サキに苗字の事を聞かれ、ボクは困ってしまう。
記憶喪失だから「ティル」以外には何も分からないんだ。
「えっとその……実は」
あまり人には話しづらい事情だけど、サキなら話せそうな気がしてボクは思い切った。
けど次の瞬間、サキが止めてきた。
「待って。話すと長そうだし、立ち話じゃなくて、あそこにでも入りましょう」
ボクの腕を引っ張りながら、彼女は近くのファミレスへと駆け出した。
その時のサキの表情は、何だかとても楽しそうだったのが印象に残った。
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