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代わりに別の話題を提供する事にした。
「サキはナノコの事、知ってる? 着てる服が一緒だから、同じ学校なんじゃないかな?」
「えっと、ティルの同居人の子よね。おきかわなのこ、だっけ?」
サキの言葉にコクリと頷く。
彼女はうーんと唸りながら、自分の知り合いを思い浮かべてるようだ。
「多分、知らない。3年生じゃないんじゃない?」
「そっか」
知り合いだったら良かったな程度の話だったので、会話はここで止まってしまう。
「……」
「……」
お互いに相手の顔を見つめるだけの状態になってしまう。
少し時間が経つにつれ、サキの頬が赤みを増していくのが分かった。
「……ア、アタシ! そろそろ行こうかしら」
急に正気に戻ったような素振りをしながら、サキは立ち上がった。
もうちょっと話したかったけど、ボクと違って暇じゃないんだ。
ボクは「うん」と頷くと、伝票を持って先に出口へ向かって行ったサキの後ろを着いていった。
「じゃあ、また会えたらね」
「そう願うわ」
店を出ると、サキはさっさと歩き出してしまった。
一瞬、名残惜しそうな表情を見せたようにも見えたが、すぐに顔を前に戻してしまったので、しっかり確認する事は出来なかった。
「サカエ、サキ」
サキの姿が見えなくなり、ボクは彼女の名前を一人でに呟く。
出会い方はちょっと特殊だったけど、オキカワの人以外の人と仲良くなれたのは収穫だ。
それに、とっても可愛かったしね。
ボクは上機嫌になりながら、散歩を再開する事にした。
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