楽園の条件

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── ─── ──── 「おっきー建物だぁ」 散歩を再開して数十分後、 ボクは何棟も建物がある巨大な施設に辿り着いた。 「これが……『学校』?」 試しにナノコの学生証を取り出してみる。 花嶋学園生徒手帳と書かれている。 そして、その施設の門の所にも『私立花嶋学園』と書かれている。 やっぱりそうだ。 ナノコとサキが通ってる所、なんだ。 「……気になるなぁ」 この建物で2人は何をしているのか、どんな設備があるのか、好奇心が膨れ上がる。 「よしっ」 そしてボクは足を踏み出した。 * 「私」は今、2年の教室で授業を受けていた。 教室内は担任で歴史の先生でもある、新原未夜(ニイハラ ミヨ)先生の言葉が響き渡っている。 隠れて携帯をいじっていたり、ゲームをしていたり、本を読んだりしているクラスメイトは何人かいても、先生以外はみんな静かだった。 「──じゃあ沖川さん、これの答えは分かりますか?」 「あっ、はい」 新原先生に名前を呼ばれ、私はすぐに返事をした。 黒板には先程、先生が書いた穴埋め式の一文が書かれている。 それを埋めつつ読みあげてください、という事がわかっているので、私は口を開いた。 「──、──です」 「はい、正解です。さすがですね、沖川さん」 私が答え終わると、新原先生は笑顔で褒めてくれた。 その顔はとても私たちよりも何個も年上の先生だとは思えない愛らしさがあった。 けれどそのスーツ姿でも存在が強く誇張されている胸囲だけは、十代後半の私たちよりも成長している証だと言う事を証明している。 (……新原先生、人気あるからなぁ……) 誰に対しても礼儀を払い、優しくも甘くない素晴らしい講師だと思う。 私をああなりたいなぁ……。 中身だけでなく、プロポーション的な意味でもそう考えていると── 突然、教室の扉がガラガラッと開いた。 みんなが開いた扉に注目する。 「あれ、声がしたと思ったんだけどな?」 そこにいたのは……日本人とは違う顔立ちと、目立つ金色の髪。 紛れもなく、ティルだった!
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