カードという軌跡

6/24

31人が本棚に入れています
本棚に追加
/258ページ
ボクは自分の記憶が空っぽだということを2人に伝えた。 「自分の容姿とか見て、思い出せないかな? こっちじゃ珍しいしね」 するとホナミはそんな事を言って、ボクに手鏡を渡してきた。 ボクが鏡を覗き込んでみると、そこにはクセで所々跳ねている金色の髪色をして、 ナノコたちとは違う青色の瞳をした、鼻筋のハッキリしている青年が写った。 これが……ボク? 残念な事に、自分の顔には記憶の欠片も残っていなかった。 その事をホナミに伝えると、 「んー……じゃ、これで探してみようか」 そう言って今度は小さなバッグをテーブルの上に置いてきた。 黒と白のストライプ調の肩掛けのバッグ。 とてもじゃないが、女物には見えない。 ということは…… 「男物……ボクの?」 ボクがそう確認してみると、ホナミはコクりと頷いた。 「君が起きるまで、中身を確認する気なかったんだけどね。この中にもしかしたら記憶の手掛かりがあるかもしれないでしょ?」 なるほど、とボクは納得した。 そしてホナミはバッグのチャックを開き、中身を確認し始めた。 「うーん……あんまし、中身が無いね……ってアレ?」 「何? どうしたのお姉ちゃん?」 ホナミが変な声を上げたので、ナノコも顔バッグの中に顔を覗き込ませた。 するとホナミが、バッグから何かを取り出した。 「君はデュエリストだったんだーっ!」 出てきたのはカードが数十枚入っているデッキケース。 ボクは、その正体とホナミの言ってる事はちゃんと理解できていた。 「デュエルモンスターズ……」 その単語を口にした瞬間、 ボクの中の何かが疼いた。 「よし、それじゃあデュエルしてみよう! 他に持ち物はないしねっ」 ボクの様子に気付いたホナミが、そんな提案をしてくれた。 ボクはそれに大賛成。 ホナミからデッキケースを受け取り、中身を確認する。 記憶になくても、これは確実にボクのデッキだ。 ボクは確信した。
/258ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加