31人が本棚に入れています
本棚に追加
/258ページ
ボクは自分の記憶が空っぽだということを2人に伝えた。
「自分の容姿とか見て、思い出せないかな? こっちじゃ珍しいしね」
するとホナミはそんな事を言って、ボクに手鏡を渡してきた。
ボクが鏡を覗き込んでみると、そこにはクセで所々跳ねている金色の髪色をして、
ナノコたちとは違う青色の瞳をした、鼻筋のハッキリしている青年が写った。
これが……ボク?
残念な事に、自分の顔には記憶の欠片も残っていなかった。
その事をホナミに伝えると、
「んー……じゃ、これで探してみようか」
そう言って今度は小さなバッグをテーブルの上に置いてきた。
黒と白のストライプ調の肩掛けのバッグ。
とてもじゃないが、女物には見えない。
ということは……
「男物……ボクの?」
ボクがそう確認してみると、ホナミはコクりと頷いた。
「君が起きるまで、中身を確認する気なかったんだけどね。この中にもしかしたら記憶の手掛かりがあるかもしれないでしょ?」
なるほど、とボクは納得した。
そしてホナミはバッグのチャックを開き、中身を確認し始めた。
「うーん……あんまし、中身が無いね……ってアレ?」
「何? どうしたのお姉ちゃん?」
ホナミが変な声を上げたので、ナノコも顔バッグの中に顔を覗き込ませた。
するとホナミが、バッグから何かを取り出した。
「君はデュエリストだったんだーっ!」
出てきたのはカードが数十枚入っているデッキケース。
ボクは、その正体とホナミの言ってる事はちゃんと理解できていた。
「デュエルモンスターズ……」
その単語を口にした瞬間、
ボクの中の何かが疼いた。
「よし、それじゃあデュエルしてみよう! 他に持ち物はないしねっ」
ボクの様子に気付いたホナミが、そんな提案をしてくれた。
ボクはそれに大賛成。
ホナミからデッキケースを受け取り、中身を確認する。
記憶になくても、これは確実にボクのデッキだ。
ボクは確信した。
最初のコメントを投稿しよう!